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精神科のお薬について

病気やお薬のコラム
2021.09.29

治療の基本は抗精神病薬療法

抗精神病薬療法は、統合失調症の治療においてもっとも基本的かつ重要な治療法です。抗精神病薬は脳内に ある受容体に作用することにより効果を発揮しますが、 単に幻覚、妄想、不安、緊張、焦燥、興奮等の初発時における急性症状を改善するだけでなく、再発予防や長期 予後の改善においてきわめて重要な役割を担っています。

 一般に、抗精神病薬は単剤で投与されることが望ましいとされています。

症状に応じて補助治療薬を併用

統合失調症ではさまざまな精神症状があらわれます。 患者さんは不安を感じたり憂うつになったり、不眠を訴えることも多く、これらの症状自体が幻覚や妄想を悪化さ せるきっかけにもなります。薬物療法では抗精神病薬以 外にも、抗不安薬や抗うつ薬、睡眠薬などの補助的な 薬剤が使用されることがあります。また、錐体外路症状副作用の項をご覧下さいなどの副作用対策として抗コ リン薬などが必要に応じて使用されます。

抗精神病薬の効果

  • 陽性症状の改善
  • 幻覚・妄想・思考障害などを改善
  • 睡眠・鎮静作用
  • 不安・焦燥・興奮をやわらげ、神経を鎮静化
  • 非定形抗精神科薬では下記の効果も期待されます。
  • 陰性症状の改善
  • 感情鈍麻、意欲低下、活動性の低下などを改善
  • 認知機能の改善
  • 集中できない、覚えられないなどを改善

抗精神病薬の副作用

副作用
  •  錐体外路症状
  • パーキンソン症状、ジストニア、アカシジアなど
  • 自律神経症状
  • 口渇、便秘、排尿困難など
  • 精神症状
  • 過鎮静による傾眠、抑うつ状態など
  • 内分泌・代謝
  • 糖尿病、高血糖、体重増加
  • 性機能障害
  • 月経異常、乳汁分泌、性機能不全
  • 悪性症候群
  • 水中毒など

抗精神病薬の一般的な作用機序

脳内の神経細胞から神経細胞への情報伝達はドパミンやセロトニン、ヒスタミンなどの神経伝達物質を介して行われます。ドパミンが過剰に放出されると「過覚醒」の状態となり、統合失調症の幻覚や妄想などの症状が起こり ます。

抗精神病薬は神経細胞の受容体に結合し、神経伝達の過剰な刺激を抑制することにより、脳内のバランスを修正します。

抗精神病薬の一般的な作用機序

抗精神病薬の種類と特徴

錠剤

非定型抗精神病薬

リスペリドン:抗幻覚・妄想作用は強く、体重増加や血糖上昇は少ない。プロラクチンの上昇に注意が必要。液剤もあり、錠剤の服薬が困難な場合に適用され、効果発現も速い。

オランザピン:錐体外路性の副作用の発現が少なく、プロラクチンの上昇もおこりにくい。1日1回投与で十分な効果が得られる。口腔内崩壊錠があり、錠剤の服薬が困難な場合に適用である。糖尿病の既往歴のある患者さんには禁忌である。血糖値の上昇、体重増加などに注意が必要である。過鎮静に注意。

クエチアピン:抗幻覚妄想効果は弱いが、抑うつ効果が期待でき、錐体外路性の副作用の発現が少なく、プロラクチンの上昇もおこりにくい。糖尿病の既往歴のある患者さんには禁忌である。血糖値の上昇、体重増加などに注意が必要。

シクレスト:舌下錠。比較的速く効き鎮静作用がある。血糖値の上昇、体重増加などは軽度。舌への刺激あり。

アリピプラゾール:副作用が少なく鎮静効果が弱いことが特徴である。単剤使用がとくに望ましい。飲み始め早期の不安、焦燥、アカシジアに注意が必要。

ブロナンセリン:抗幻覚・妄想作用は強く、血糖値の上昇、体重増加がほとんどなく、プロラクチンの上昇がおこりにくく鎮静が弱いのが特徴。

ラツーダ:抗幻覚妄想作用および抗不安、抗うつ、認知の改善に優れているが人によっては合わないことも多い。

ルーラン:鎮静作用は弱く、抗不安効果があり、錐体外路性の副作用の発現が少ないことが特徴である。食事の影響を受けやすいので食後に服用すること。

レキサルティ:アリピプラゾールよりもアカシジアやパーキンソン症状が出にくい。

定型 抗精神病薬

フェノチアジン系

レボトミンより強い鎮静作用と催眠作用をもつので、通常の睡眠薬では効果が不十分な強い不眠に応用される。ふらつきや血圧低下、口渇、便秘がおこりやすい。

ブチロフェノン系

セレネース抗幻覚・妄想作用が優れている。錐体外路症状が起きやすいので予防として抗パーキンソン病薬が必要となります。

ハロマンス:持続性注射剤。4週間ごとで効果が持続する。人によって注射後2~3日だるさが出る場合がある。

その他

ロドピン(ゾテピン):優れた鎮静作用をもつ。自閉、意欲鈍麻にも有効である。

抗精神病薬の服用について

副作用かな?と思われるようなことが起こったら、まず医師に相談してください。

症状が安定してきても服薬継続を

 症状は、良くなったり悪くなったりを繰り返しながら、少しずつ快方に向かっていきます。あせらずに服用を続けて下さい。良くなったと思われても自己判断でお薬を止めないでください。症状の安定と再発予防のためにも、医師がいいと判断するまで服薬を続けてください。再発するとより多くの薬を必要になることがあります。

 治療はあせらずじっくりと時間をかけて行われます。常に、主治医と相談しながら治療を進めていきましょう。

医師に相談

持続性注射剤(LAI、デポ剤)もあります

1回の注射で2~4週間効果が続くので、よく薬を飲み忘れる人や毎日の服薬にわずらわしさを感じている人などの助けになります。

ゼプリオン:インヴェガの注射剤で、効果が4週間持続。

エビリファイ持続性水懸筋注:効果が4週間持続。

ハロマンス:セレネースの持続効果注射剤で。効果が4週間持続。